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房総半島一周 美味い魚ツーリング BMW R1150RT (著者T君) 2003年12月14日

2003年12月14日、冬真っ只中のツーリング。 冬のツーリングは寒いが、嫌いではない。空気が凛と引締まっていて、景色やバイクの音が美しく澄みわたっている気がするからだ。 今回のコースは千葉の房総半島。少々遅目の午前十時にTさんと幕張PAに集合、ホットコーヒーを一杯流し込んで、いざ房総方面へ。 房総半島へ向かう館山道は車もまばらで、道路は貸し切り状態。僕の所有するXJR1300は空冷エンジンであるため、冬の冷風にご機嫌のエンジンが軽く軽〜く吹け上がる。風の様なスピードで気ままに走っていると、2時間とたたずにお鮨屋さんに到着した。

 おすし屋さんは、バイク乗りが集う「富鮨」。自慢のしめ鯖コースを頂いてみると、美味しい。握った鮨に、心地よい人の温み(注:体温が移っているという意味ではない)を感じて、心が温かくなる味であった。そしてその不思議な温かみの理由は、じきに明らかになった。お店には若い男の子が接客係として働いている。彼はいわゆる頭のゆるい子である。その彼は店で活き活きと働いており、我々が道の話をしていると、勢い良く話題に入ってきたりもする。そこには虐げられた人間に特有の、うつむきながら目だけで人をギョロッっと見上げるようなしぐさは微塵も無い。このお店の大将は、彼に働く場を与え、活き活きとさせているのである。経営が苦しければ精一杯頑張る社員をリストラする事なぞ当たり前の時代に、何事も無いように彼を接客に使い、そして彼は活き活きと働いている。この度量の深さ、温かみと大きさが、大将の鮨に宿っている。同じネタ、同じシャリを機械が握っても絶対に作れない、温かみがある。なぜ皆が3000円以上のお金を払ってでもはるばるここに鮨を食 べに来るのか、理解できた。それは温かみのある握りを食べる、とびきりの贅沢だったのだ。

良い気持ちになって富鮨を後にし、その後は房総半島をまわりながら九十九里方面に走った。房総半島の景色は北海道の道路(黄金道路周辺)に少し似ており、走っていてすこぶる気持ちが良い。そして九十九里では温泉と鰯料理を平らげ、この贅沢なツーリングも満足のうちに帰路へ。 冬のツーリングも悪くないと再確認した一日であった。