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Kさんの思い出 10年前?

Fさんの雪の話で思い出しました。石川県は金沢で、ライダーとして最も輝いていた頃。北陸は12月から曇り・雨の日が多くなり、1〜3月は殆ど晴天の日が無く毎日雨と雪が降り続きます。

路面が乾くことは殆どなく、シーズン中は毎日最低でも60キロは走っていライダーの私にとり、北陸の冬はつらい時期でした。石川県内のライダーが聖地としている場所に、金沢市内から車で約1時間(バイクだと40分)の手取川上流にある手取川ダムがあります。東京で言えば奥多摩のようなものですが、奥多摩よりも高速コーナーが多く、車も少ないので気持ちよく走れます。

ある年の1月2日。正月、実家に帰らず朝起きると、暮れまで小雪交じりの雪だった天気が打って変わり、北陸の鉛色の厚い雲間からなんと太陽が。路面も乾いている!瞬間皮パンを履き、ジャケットを着て900Rに跨っている自分がいました。冬場は特にアイドリングが落ち着かない川崎重工の古びた機体ですが、イギリス仕様であるせいか、寒冷地仕様のキャブがこういう所で生きるのか、直ぐに全開にできる状態に。


そのまま聖地へ。スキー客を乗せた車のドライバーに奇異な目で見られつつ、ひたすらR157を白峰村方面へ。道の両端は無論、雪。所によっては道路の真ん中にも雪が残っている箇所が。でもバイクに乗れる喜びに比べれば、そんなものはまったく気にならずでした。ダムの手前5キロ辺りで遂に路面はフル雪上状態に。

ここまできたら行くしかないと腹を決め、コーナーでは足をつきながら何とかダム湖手前の最後のトンネルをクリア(ここだけは全開走行をenjoy!)、聖地着。そこにはいつもいるバイカー達の姿はなくスキー客ばかり。缶コーヒーを飲み乍、独りニヤニヤしている僕を見て、恐らく「こいつアホか?」と思われたことでしょう。


暫くして帰ろうとすると、駐車場の向こう、トンネル内からどう聞いてもバイクとしか思えないエグゾーストノートが・・・。「まさか?」と思いきや、やはりクレイジーな人はいるもの。入ってきたのは全身黒づくめのツナギを着たライダーの駆る白のBMWK100RS。気がつくと、雪が・・・。「まずい、帰らなければ・・・」とB帰路に。帰りは大雪・・・。北陸の天気は変わりやすいのですが、何度も死にそうになりつつ暴れる900Rをコントロールしつつ慎重にコーナーをクリア。

ふと、バックミラーにイエローバルブの白い機体が張り付いているのに気づきます。「!」と思った瞬間、右から「ズロロロ〜」っという特有のあのサウンドに抜かれました。左手親指を突き上げるのハンドサインを出されつつ・・・。さっきのBMWでした。その後、懸命に追いつこうとしましたが、無理でした。やはりABSの威力なのか、などと思いつつも、リーン・ウィズで何も無かったかのように鮮やかにコーナーをクリアしてゆく後ろ姿だけが鮮明に目に焼きついていたのでした。「BMWって、あんなに早かったっけ・・・」と。確か、換装重量は900Rより重いはずなのに・・・

冬の想い出しでした。

それにしてもニンジャ。本当に良いバイクでした。「ガリョリョリョ〜」と発進し、中間加速すると「バ〜ン」という風に音の変わるあのビッグバイクらしい重厚なサウンド。たまりませんでした。又、フロントカウルとリアカウルのあの造形美。本当に戦闘機のようです。SFに出てくるおもちゃのようなそれではなく、F4ファントムのような重厚で渋い括弧よさがありましたです。